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名古屋地方裁判所 平成7年(ワ)362号 判決 1999年11月24日

甲事件=原告

被告

Y1

他1名

乙事件=原告

安田火災海上保険株式会社

被告

Y1

主文

一  甲、乙事件被告Y1、甲事件被告Y2は、各自甲事件原告に対し、金三六四四万一九七六円及びこれに対する平成四年四月一一日から各完済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  甲、乙事件被告Y1は、乙事件原告に対し、金三四三万七一四〇円及びこれに対する平成八年三月一四日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

三  甲事件原告、乙事件原告のその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、甲事件、乙事件を通じてこれを四分し、その一を甲、乙事件被告Y1、甲事件被告Y2の負担とし、その余を甲事件原告、乙事件原告の負担とする。

五  この判決は第一、二項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  甲、乙事件被告Y1(以下「被告Y1」という。)、甲事件被告Y2(以下「被告Y2」という。)は、各自甲事件原告に対し、金一億七一八五万二四八二円及びこれに対する平成四年四月一一日から各完済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告Y1は、乙事件原告に対し、金四九九万二八一五円及びこれに対する平成八年三月一四日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、甲事件原告運転車両、被告Y1運転車両及び訴外A運転車両間の交通事故によって甲事件原告が被った損害につき、甲事件原告が民法七〇九条、自賠法三条に基づき被告らに対し右損害金及びこれに対する本件事故の日から完済までの遅延損害金の支払を求め(甲事件)、右事故によって、関係する甲事件原告、訴外愛知交通株式会社、同A、同Bが被った損害につき甲事件原告と自動車保険契約を締結していた乙事件原告が右の者に保険金を支払ったことから、乙事件原告が被告Y1に対し求償金等及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日から完済までの遅延損害金の支払を求め(乙事件)た事案である。

一  争いのない事実等

1  左記の事故(以下「本件事故」という。)が発生した(甲一一)。

(一) 発生日時 平成四年四月一一日午前一時三〇分ころ

(二) 発生場所 名古屋市中区丸の内一丁目一三番一一号先道路上(名津線)

(三) 第一車両 普通乗用自動車(三重○○ふ○○○号)

運転者 被告Y1

(四) 第二車両 普通乗用自動車(名古屋○○ち○○○号)

運転者 甲事件原告

(五) 第三車両 普通乗用自動車(名古屋○○か○○○号)

運転者 訴外A

同乗者 訴外B、同C

使用者 訴外愛知交通株式会社(丙八)

(六) 事故の態様 東西方向の道路(以下「本件東西道路」という。)の異なる車線をいずれも東進していた第一車両及び第二車両が接触事故を起こした後、対向車線に進出し、本件東西道路を西進していた第三車両と衝突した(甲一)。

2  被告Y2は、第一車両の保有者で、本件事故当時第一車両を運行の用に供していた(弁論の全趣旨)。

3  甲事件原告、訴外A、同B、同Cの各傷害

本件事故により甲事件原告は頸部捻挫、頸髄不全損傷の、訴外Aは頸部、右肘、左足挫傷等の、同Bは頭部打撲、頸部挫傷等の、同Cは腰部挫傷等の各傷害を負った(甲四の1、丙一三の1、一九の1、二三の1)。

4  第二車両、第三車両の損傷

本件事故により第二車両、第三車両が損傷した。

5  甲事件原告は前記傷害につき次のとおり入通院して治療を受け、平成五年三月一七日症状固定となった(甲四の1)。

(一) 入院

(1) 菊井外科病院 平成四年四月一一日から同月三〇日まで(二〇日間)(甲六)

(2) ちた整形外科クリニック 平成四年九月二一日から平成五年二月一四日まで(一四七日間)(甲四の1)

(二) 通院

(1) 菊井外科病院 平成四年五月一日から同年六月三〇日まで(実日数二〇日間)(甲六)

(2) ちた整形外科クリニック 平成四年五月一一日から同年九月二〇日まで(実日数五六日間)(甲七の2)

(3) ちた整形外科クリニック 平成五年二月一五日から同年三月一七日まで(実日数八日間)(甲四の1、七の2)

6  訴外Aは前記傷害につき次のとおり入通院して治療を受けた。

(一) 入院

菊井外科病院 平成四年四月一三日から同年五月二九日まで(四七日間)(丙一三の1、4)

(二) 通院

菊井外科病院 平成四年四月一一日から同月一二日まで(実日数一日間)(丙一三の1)

7  訴外Bは前記傷害につき次のとおり通院して治療を受けた。

名古屋第二赤十字病院 平成四年四月一一日から同年五月二二日まで(実日数六日間)(丙一五)

8  訴外Cは前記傷害につき次のとおり通院して治療を受けた。

(一) 名古屋第二赤十字病院 平成四年四月一一日から同月二一日まで(実日数三日間)(丙一七)

(二) 遠藤外科 平成四年四月二二日から同年六月二日まで(実日数一一日間)(丙一七)

9  乙事件原告は甲事件原告との間に第二車両を被保険自動車とする自動車保険契約を締結しており、本件事故につき甲事件原告に対し二八一万七九三〇円を車両保険金として支払い、訴外愛知交通株式会社に対し九五万二五三〇円を対物保険金として支払い、訴外Aに対し三五二万五九六六円を、同Bに対し三六万二八四五円を、同Cに対し三〇万四九五〇円をそれぞれ対人保険金として支払い、これにより右同額につき甲事件原告の被告Y1に対する損害賠償請求権が乙事件原告に移転した(丙一、二の1、2、三の1、2、四ないし七、二四ないし二七、弁論の全趣旨)。

10  既払金

(一) 甲事件原告と被告らとの仮処分事件(当庁平成七年(ヨ)第一三五九号)における和解に基づき、被告らは甲事件原告に対し合計四〇〇万円を支払った。また、被告らの契約していた自賠責保険から甲事件原告に対し合計一二八八万円の保険金が支払われた。

(二) 甲事件原告の契約していた自賠責保険から乙事件原告に対し訴外Aの損害につき二四〇万円の、同Bの損害につき三二万三〇七一円の、同Cの損害につき二四万八三三五円の各保険金がそれぞれ支払われた。

11  消滅時効の援用

被告Y1は、乙事件原告の被告Y1に対する請求権は時効により消滅したとして、平成八年九月二四日当審第一三回口頭弁論期日において陳述した同日付け準備書面において右時効を援用した。

二  争点

1  本件事故の態様及び甲事件原告、被告Y1の過失の有無、程度、過失相殺

2  甲事件原告、訴外愛知交通株式会社、同A、同B、同Cの損害の存否、損害額

3  乙事件原告の請求についての消滅時効の成否

第三争点に対する判断

一  争点1について

前記争いのない事実等及び証拠(甲一、二、三の1、2、乙一の1ないし4、七ないし一〇、一二ないし一四、一六ないし一八、一九ないし二一(いずれも後記認定に反する部分を除く。)、二二ないし二五、丙二の2、三の2、甲事件原告本人)によると、以下の事実が認められる。

1  本件東西道路のそれぞれ南北には歩道との間に側道があり、右側道と区分された車道本線部分は東西進行方向それぞれ三車線となっていた(以下、右本線部分につきそれぞれ歩道側から「第一車線」等という。)。

本件事故現場は交差点(通称「桜橋東」交差点、以下「本件交差点」という。)であった。

2  被告Y1は、本件事故前、飲酒をしていた。そして被告Y1は、本件交差点西側約五〇メートルの位置にある交差点で赤信号のため停止した。被告Y1は、その際、本件東西道路の東進方向の第三車線に停止した。なお被告Y1は本件交差点を直進する予定であった。

3  甲事件原告は、本件事故前、後記認定の事故で身体障害者福祉法に基づく三級の認定を受けており、平成四年二月一九日、運転免許を取得し、まもなく第二車両を購入した。

甲事件原告も、本件事故直前、本件交差点西側約五〇メートルの位置にある交差点で赤信号のため停止した。甲事件原告は、その際、本件東西道路の東進方向の第二車線に停止した。なお甲事件原告も、本件交差点を直進する予定であった。

4  被告Y1は、前方の赤信号が青信号となるのを確認して第一車両を発進させ、第三車線を走行した。まもなく甲事件原告の運転する第二車両も第二車線を走行し、第一車両に追いつき、これを追い抜く状態となった。

5  被告Y1は、本件交差点手前の第三車線の路上に右折道路を示す矢印が目に入ったころ、第一車両の進路を左に向け、このため第一車両の左側部分が第二車両の右側部分に衝突した。

甲事件原告は右衝突の衝撃を感じ、第二車両が左側に進路を向けないよう右に急ハンドルを切った。このため、第一車両、第二車両がいずれも対向する本件東西道路の西進方向の車線に進出した。そして右各車両は、その際、本件東西道路の西進方向の第三車線を走行していた第三車両にそれぞれ衝突した。

以上のとおり認められる。

被告らは、第二車線を走行していた甲事件原告が第二車両を右方向にスリップ等させ、このため第一車両に衝突し、本件事故発生に至った旨を主張し、証拠(乙六、一一、一九ないし二一)中にはこれに沿う部分があるが、前掲証拠に照らし採用できない。

そして右によると、被告Y1は走行中突然左に進路を変更し、第一車両を並進する第二車両に衝突させたものであり、本件事故発生につきその過失は大きいものといわねばならない。したがって、甲事件原告に自動車運転者として期待される一般的な注意義務があったこと、また本件道路状況等の事情を最大限考慮しても、本件事故発生については被告Y1側に八割の割合の過失があったものと認めるのが相当である。他方、甲事件原告については前記のような事情を考慮し、本件事故発生につき二割の割合の過失があったものと認め、後記原告らの各損害等については右割合による過失相殺をするのが相当である。

二  争点2について

1  甲事件原告の損害額

(一) 治療費(請求額同じ) 八〇万六三六〇円

甲事件原告は本件事故により前記のとおり傷害を受け、菊井外科病院、ちた整形外科クリニックに入通院して治療を受けたところ、証拠(甲六、七の1ないし8)及び弁論の全趣旨によると、その治療費として頭書金額を要したことが認められる。

(二) 付添看護費(請求額一二九万六〇〇〇円) 二一万円

甲事件原告は、菊井外科病院、ちた整形外科クリニックの入通院に伴う付添看護費として頭書金額を請求する。しかし右各病院での治療が付添看護を要するものであることの立証はなく、かえって証拠(乙三の25、26)によると、ちた整形外科クリニックにおいては医師が付添看護を命じたことがないことが認められる。したがって直ちにその必要性を認めることはできない。

もっとも後記認定のとおり甲事件原告は、本件事故により自賠法施行令別表三級該当の後遺障害を残したのであるから、その通院については付添いが必要であったものと認められる。そして通院付添費は一日当たり二五〇〇円を要したものと認められるところ、前記のとおり甲事件原告の通院日数は八四日であるから、その合計は頭書金額となる。

(三) 通院交通費(請求額三三万五六八〇円) 二五万八〇〇〇円

甲事件原告は、通院交通費として頭書金額を主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。もっとも、前記のとおり菊井外科病院、ちた整形外科クリニックの実通院日数合計は八四日に及び、また右各病院への入退院についても交通費を要したことは明らかであり、弁論の全趣旨によると、その公共交通機関を利用した単価は一日当たり三〇〇〇円(付添分も含む)であると認められるから、その合計は頭書金額となる。

(四) 入院雑費(請求額二三万三八〇〇円) 一八万三七〇〇円

甲事件原告は、前記のとおり菊井外科病院、ちた整形外科クリニックに合計一六七日入院したところ、入院雑費は一日当たり一一〇〇円を要したものと認められるから、その合計は頭書金額となる。

(五) 休業損害(請求額一一〇〇万円) 二三五万〇七九七円

証拠(甲四の1、一一、甲事件原告本人、鑑定(鑑定人D))によると、甲事件原告は本件事故前である昭和五二年七月プールに飛び込んだ際に事故に遭い、このため身体障害者福祉法に基づく三級の認定を受けていたこと、右後遺障害は自賠法施行令別表五級相当のものであったこと、甲事件原告は、本件事故当時三二歳でスナック、麻雀荘(ただし平成三年一二月まで)経営をしていたこと、本件事故により右スナックは店長に経営を委ねていたがまもなく利益が出ず、赤字となり、平成六年一一月に閉鎖するに至ったこと、なお麻雀荘については確定申告をしていたが、スナックについては申告をしていなかったこと、甲事件原告は、平成五年三月一七日症状固定となったことが認められる。

そうすると、本件事故前の甲事件原告の年収については、右のようなプール事故による後遺障害の存在を考慮すると多少の疑問があるが、少なくとも平成四年(五年版)賃金センサス産業計、企業規模計、学歴計、当該年齢男子労働者平均賃金である五〇三万二五〇〇円の五割相当はあったものと認められる。また、前記のとおりスナック営業は本件事故後も継続していたが、赤字までも発生して結局閉鎖せざるを得なかったことも考慮すると、休業損害を認定するに当たっては、右赤字分も含む趣旨で、本件事故日である平成四年四月一一日から症状固定日である平成五年三月一七日まで(合計三四一日間)その営業ができなかったものとして算出するのが相当である。

そしてこれによると頭書金額となる。

5,032,500×0.5÷365×341=2,350,797

なお甲事件原告は、本件事故前の月収が一〇〇万円あったと主張し、これに沿う供述をするが、これを裏付ける証拠もなく、直ちには採用できない。

(六) 傷害慰謝料(請求額二七〇万円) 二四〇万円

本件事故による甲事件原告の傷害の内容、入通院期間等を考慮すると頭書金額をもって相当とする。

(七) 後遺障害逸失利益(請求額八一五九万九九六二円) 四九八二万八九四八円

証拠(甲四の1、鑑定(鑑定人D))によると、甲事件原告は、平成五年三月一七日(三三歳)症状固定となったこと、その後遺障害は自賠法施行令別表三級に該当したこと、もっとも甲事件原告には、前記のプール事故による後遺障害があり、右は前記別表五級相当であったことが認められる。

そして前記休業損害において判断したとおり、甲事件原告は本件事故前には、少なくとも平成四年(五年版)賃金センサス産業計、企業規模計、学歴計、当該年齢男子労働者平均賃金である五〇三万二五〇〇円の五割相当の年収はあったものと認められるのであるから、本件事故による後遺障害がなければ、少なくとも右症状固定日から六七歳までの三四年間、少なくとも平成五年(六年版)賃金センサス産業計、企業規模計、学歴計、当該年齢男子労働者平均賃金である五〇九万六六〇〇円の五割相当の収入が得られたであったと認められるところ、前記のとおり本件事故により自賠法施行令別表三級該当の後遺障害が残り、これによりその全部を失ったものと認められる。そこで、右センサスの金額を基準に新ホフマン方式によって現価を算出すると頭書金額となる。

5,096,600×0.5×19.5538=49,828,948

(八) 後遺障害慰謝料(請求額二一〇〇万円) 五〇〇万円

前記のとおり甲事件原告には本件事故に基づき自賠法施行令別表三級該当の後遺障害が残ったこと、もっとも甲事件原告には、従前前記別表五級相当の後遺障害があったことが認められ、これによると本件事故による後遺障害慰謝料は頭書金額をもって相当とする。

(九) 将来の介護費用(請求額四九五一万三六八〇円) 〇円

前記のとおり甲事件原告には本件事故に基づき自賠法施行令別表三級該当の後遺障害が残ったことが認められるところ、右は将来労務に服することは困難といわねばならないが、介護まで要するものとまでは認められず、したがって右介護費用を請求する甲事件原告の請求は失当である。

(一〇) 自宅改造費用(請求額五〇四万七〇〇〇円) 三三六万四六六六円

証拠(甲八、鑑定(鑑定人D))によると、甲事件原告は自宅改造を予定していること、その費用として前記請求額相当の見積書があること、ところで本人がリハビリテーションに励む等のためにも自宅改造は望ましいことが認められる。もっとも、前記のとおり甲事件原告の後遺障害は自賠法施行令別表三級に該当し、これによる労働能力喪失は六七歳までの全期間であると認められるものであるから、リハビリテーションをしても労働能力の回復は困難であること、前記見積書記載の工事がすべて本件事故と因果関係があるとまでいえるかは疑問であること等の事情も考慮すると、その三分の二相当である頭書金額をもって本件事故と因果関係ある損害と認めるのが相当である。

(一一) 以上人身損害合計(請求額一億七三五三万二四八二円) 六四四〇万二四七一円

以上の合計は頭書金額となる。

(一二) 過失相殺

前記のとおり本件事故発生については甲事件原告にも二割の過失があったものと認めるのが相当であるから、これによるとその損害は五一五二万一九七六円となる。

64,402,471×(1-0.2)=51,521,976

(一三) 弁護士費用(請求額一〇〇〇万円) 一八〇万円

本件事案の内容、認容額等考慮すると、これに対する弁護士費用は頭書金額をもって相当とする。

(一四) 既払金 一六八八万円

前記のとおり当事者間に争いがない。

(一五) 車両損害

本件事故により第二車両が損壊したところ、証拠(丙二の1、2)によるとその損害額は二八一万七九三〇円相当となったことが認められる。なお右損害については前記のとおり乙事件原告が甲事件原告に対し車両保険金として支払っており、したがって乙事件原告が右金額につき被告Y1に対し請求することになるが、前記のとおり本件については甲事件原告に二割の過失があることから、乙事件原告も右金員中二二五万四三四四円につき請求できるものである。

2  訴外愛知交通株式会社の損害額

本件事故により第三車両が損壊したところ、証拠(丙三の1、2、八ないし一一)及び弁論の全趣旨によるとその損害額(車両損害額、休車料、レッカー代)は九五万二五三〇円相当であったことが認められる。なお右損害については前記のとおり乙事件原告が訴外愛知交通株式会社に対し対物保険金として支払っており、したがって乙事件原告が右金額につき被告Y1に対し求償することになるが、前記のとおり本件については甲事件原告に二割の過失があることから、乙事件原告も右金員中七六万二〇二四円につき求償できるものである。

3  訴外Aの損害額

(一) 治療費 一二七万四六〇五円

訴外Aは本件事故により前記のとおり傷害を受け、菊井外科病院に入通院して治療を受けたところ、証拠(丙一二、一三の2、3、5、6)及び弁論の全趣旨によると、その治療費として頭書金額を要したことが認められる。

(二) 通院費 四一四〇円

証拠(丙一二)及び弁論の全趣旨によると、前記入通院に伴う通院費として少なくとも頭書金額を要したことが認められる。

(三) 入院雑費 三万二九〇〇円

証拠(丙一二)及び弁論の全趣旨によると、前記入院に伴う雑費として少なくとも頭書金額を要したことが認められる。

(四) 休業損害 一五〇万二八六四円

証拠(丙一二、一四の1ないし6)及び弁論の全趣旨によると、訴外Aは訴外愛知交通株式会社に勤務していたこと、前記入通院に伴う休業損害は頭書金額相当であったことが認められる。

(五) 傷害慰謝料 七七万円

証拠(丙一二)及び弁論の全趣旨によると、本件事故による傷害慰謝料は少なくとも頭書金額を下らないことが認められる。

(六) 合計 三五八万四五〇九円

なお乙事件原告が訴外Aに対し対人保険金として支払った金額は前記のとおり右損害中三五二万五九六六円である。したがって右金額につき被告Y1に対し求償することになるが、前記のとおり本件については甲事件原告に二割の過失があることから、乙事件原告も右金員中二八二万〇七七二円につき求償できるものである。

そして、前記のとおり既払金が二四〇万円あることは当事者間に争いがないので、これを控除すると四二万〇七七二円となる。

4  訴外Bの損害額

(一) 治療費 一一万二八四五円

訴外Bは本件事故により前記のとおり傷害を受け、名古屋第二赤十字病院に通院して治療を受けたところ、証拠(丙一五、一六の1ないし6、一九の2、4、二〇)及び弁論の全趣旨によると、その治療費として頭書金額を要したことが認められる。

(二) 通院費 八八七〇円

証拠(丙一五、二一の1ないし3)及び弁論の全趣旨によると、前記通院に伴う通院費として少なくとも頭書金額を要したことが認められる。

(三) 休業損害 一五万六七五六円

証拠(丙一五、二二の1ないし3)及び弁論の全趣旨によると、訴外Bはスナックのいわゆるママをしていたこと、前記通院に伴う休業損害は頭書金額相当であったことが認められる。

(四) 傷害慰謝料 一〇万三〇〇〇円

証拠(丙一五)及び弁論の全趣旨によると、本件事故による傷害慰謝料は少なくとも頭書金額を下らないことが認められる。

(五) 合計 三八万一四七一円

なお乙事件原告が訴外Bに対し対人保険金として支払った金額は前記のとおり右損害中三六万二八四五円である。したがって右金額につき被告Y1に対し求償することになるが、前記のとおり本件については甲事件原告に二割の過失があることから、乙事件原告も右金員中二九万〇二七六円につき求償できるものである。

しかし、前記のとおり既払金が三二万三〇七一円あることは当事者間に争いがないので、これを控除すると求償できる額はないことになる。

5  訴外Cの損害額

(一) 治療費 一四万四五三五円

訴外Cは本件事故により前記のとおり傷害を受け、名古屋第二赤十字病院、遠藤外科に通院して治療を受けたところ、証拠(丙一七、一八の1ないし7、二三の2、4、5)及び弁論の全趣旨によると、その治療費として頭書金額を要したことが認められる。

(二) 傷害慰謝料 一六万六〇〇〇円

証拠(丙一七)及び弁論の全趣旨によると、本件事故による傷害慰謝料は少なくとも頭書金額を下らないことが認められる。

(三) 合計 三一万〇五三五円

なお乙事件原告が訴外Cに対し対人保険金として支払った金額は前記のとおり右損害中三〇万四九五〇円である。したがって右金額につき被告Y1に対し求償することになるが、前記のとおり本件については甲事件原告に二割の過失があることから、乙事件原告も右金員中二四万三九六〇円につき求償できるものである。

しかし、前記のとおり既払金が二四万八三三五円あることは当事者間に争いがないので、これを控除すると求償できる額はないことになる。

6  以上によると、甲事件原告の損害は三六四四万一九七六円、乙事件原告の請求額は三四三万七一四〇円となる。

三  争点3について

被告Y1は、乙事件原告が前記保険金を甲事件原告らに対し支払ったのは乙事件提起時である平成八年三月五日から三年以上前であったこと、したがって本訴提起時には既に被告Y1に対する請求権は時効により消滅した旨を主張する。しかし、証拠(甲一三)及び弁論の全趣旨によると、本件事故を捜査した検察官は捜査の結果、被告Y1にではなく、甲事件原告に対しその刑事責任が認められるとして、平成五年、名古屋簡易裁判所に対し起訴をしたこと、しかし同裁判所における審理の結果、同裁判所は平成七年一〇月一六日甲事件原告は無罪であるとの判決をしたこと、そして右判決は同月末ころ確定したことが認められる。そうすると、甲事件原告はもちろん、甲事件原告と自動車保険契約を締結していた乙事件原告としても、少なくとも右判決確定までの間は民法七二四条所定の「加害者を知りたる時」には当たらないものといわねばならない。したがって、前記乙事件原告の訴え提起時にはまだ時効が完成していなかったものと認めるのが相当であり、被告Y1の前記主張は採用できない。

第四結論

以上の事実によれば、原告らの本訴請求は被告らに対し前記金額の支払を求める限度でそれぞれ理由があるからこれを認容し(乙事件につき訴状送達の日の翌日が平成八年三月一四日であることは本件記録上明らかである。)、その余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、主文のとおり判決する。

(裁判官 北澤章功)

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